2007年 06月 24日
脱「バリュー投資」小論(5)~、相対的価値のもう一つの意味の巻
先週から株主総会へ行きまくっております。といいましても、プライベートの投資の方は一件も行っておりませんで、本業側でお金を入れております先の内、上場してるところへ安定株主として何件か出席。うちの部長さんと僕の二人で手分けしてすぱすぱこなす。内容は事前に説明を受けており、意見があればその時点で協議してあるので、特段何の期待もなし、仕事もなし。ただ顔を出して、気が向いたら軽い野次など飛ばしてみますがそれだけ、さくさく済ませ、終わったらタクシー飛び乗って次だ次!ってなもんで、まったく古きよき日本のお手打ちしゃんしゃん総会であります。
うっとこの業界では、資本関係のことを「肉体関係」なんてやらしい言い方しましてね、「あっことあっこはこないだ肉体関係なったから、もうこっちからはどうしようもないな」なんて風に使う。なら事前に相手の了解を得ず一方的に株を買うことを「強姦」なんつて、資本力にモノを言わせてガンガンやっててもおかしくないように思いますが、基本的にそれはやらんのな。だってわしら事業会社やねんもん。株を買うのはイチャイチャしたいから、そこから取引とか合弁とか技術とか、そういう何かを引き出したいからなんであって、金出したあげくに相手先と関係悪くしてどうするよ。会社の評判も落ちるわ。これが怖い。
わしら、ひとたび事業戦略上何%まで買うと決めたらバリュエーションなんぞほとんど気にしません。要は、拠出するリスクマネーの対価として入手するものが、株屋さんを始めとするファイナンス頭の人たちとはまったく違うのね。手に入れた株券という有価証券単体が安い高いなんて、あまり気にしない。問題はうちの会社の商売として、それを手に入れることでどういう絵が描けるか。描けなくなったらさっさと売っちゃいます。もう意味ないし、クローズする案件がどうなろうと大して興味もねえってか。これはあまり良くないですねw
つまり、わしら事業会社にとって市場価格の変動はさしたるリスクでないというわけね。そりゃたまたま売るときに値上がりしてりゃ特別利益くらい出ますが、会社も、そしてなぜか株式市場も株で稼いだ利益なんかまともに評価してくれませんわ。損には多少厳しいけれど。これが事業会社の基本的な考え方だと思います。HOYAとPENTAXみたいに、案件規模が巨大になってくるとそういう訳にもいかんのでしょうが、数十億円程度の小口案件だとその程度の認識しかないのが実態で、かつ、わしらも立派な市場のプレイヤーだ。
ファイナンス頭ばっかりで株なんかやっておりますと、投資においては有価証券単体の価値が安い高いばっかりで、それが全てであり、それに外れることは全て愚行、んでもってバリューアノマリーの発生原因で市場の肥やし乙プギャーみたいな視野狭窄に陥りがちなんですがね、そりゃちょっと違うね。世の中株屋だけで動いてるんじゃねえんだよ。ここんとこ勘違いしてはいけない。事業会社こそが企業価値を左右する存在だ。そこんとこお忘れなきよう。
Price is what you pay and value is what you get.
Warren Buffett
(価格とは、何かを買うときに支払うもの。価値とは、何かを買うときに手に入れるもの。)
わたくし、こりゃタイヘンな名言だと思っているんですが、少しく言葉足らずだと思う。僕が付け加えるなら、こうだ。
Price is what you pay and value is what you get. But value is related to your place to stand, and the difference makes market, also.
(価格とは、何かを買うときに支払うもの。価値とは、何かを買うときに手に入れるもの。しかし、手に入る価値は買い手の立場によって変わり、その違いもまた市場を形成する。)
ありていに言えば、トヨタ自動車にとってのデンソー株の価値と、ずんちゃかにとってのデンソー株の価値は全く違う。また、デンソー株にとってトヨタの売買行動とずんちゃかの売買行動は全く違う意味を持つ。ずんちゃかがデンソー株を買おうが売ろうがその価値に何ら影響は与えないが、トヨタがデンソー株を売って、あまつさえ同時にカルソニックカンセイ株を買ったりしようものなら、実際にデンソーの事業に関する情報が変化しなくとも、デンソーの将来価値のディスカウントレートがニワカに跳ね上がり、価値も価格も大暴落するだろうことは想像に難くない。また、デンソー株が突然今の100倍に値段が跳ね上がったところで、トヨタが利確するかね。
以前、商品先物の世界を例に引いて「実需筋と投機筋」という考え方をご紹介したことがあったのだけれど、あのとき言いたかったのはこのことである。何か例が極端すぎて不適当なような気もするが、まあそういうことである。株券に何か唯一無二の神聖な絶対的価値があるという幻想は、今すぐ便所に流していただきたい。
うっとこの業界では、資本関係のことを「肉体関係」なんてやらしい言い方しましてね、「あっことあっこはこないだ肉体関係なったから、もうこっちからはどうしようもないな」なんて風に使う。なら事前に相手の了解を得ず一方的に株を買うことを「強姦」なんつて、資本力にモノを言わせてガンガンやっててもおかしくないように思いますが、基本的にそれはやらんのな。だってわしら事業会社やねんもん。株を買うのはイチャイチャしたいから、そこから取引とか合弁とか技術とか、そういう何かを引き出したいからなんであって、金出したあげくに相手先と関係悪くしてどうするよ。会社の評判も落ちるわ。これが怖い。
わしら、ひとたび事業戦略上何%まで買うと決めたらバリュエーションなんぞほとんど気にしません。要は、拠出するリスクマネーの対価として入手するものが、株屋さんを始めとするファイナンス頭の人たちとはまったく違うのね。手に入れた株券という有価証券単体が安い高いなんて、あまり気にしない。問題はうちの会社の商売として、それを手に入れることでどういう絵が描けるか。描けなくなったらさっさと売っちゃいます。もう意味ないし、クローズする案件がどうなろうと大して興味もねえってか。これはあまり良くないですねw
つまり、わしら事業会社にとって市場価格の変動はさしたるリスクでないというわけね。そりゃたまたま売るときに値上がりしてりゃ特別利益くらい出ますが、会社も、そしてなぜか株式市場も株で稼いだ利益なんかまともに評価してくれませんわ。損には多少厳しいけれど。これが事業会社の基本的な考え方だと思います。HOYAとPENTAXみたいに、案件規模が巨大になってくるとそういう訳にもいかんのでしょうが、数十億円程度の小口案件だとその程度の認識しかないのが実態で、かつ、わしらも立派な市場のプレイヤーだ。
ファイナンス頭ばっかりで株なんかやっておりますと、投資においては有価証券単体の価値が安い高いばっかりで、それが全てであり、それに外れることは全て愚行、んでもってバリューアノマリーの発生原因で市場の肥やし乙プギャーみたいな視野狭窄に陥りがちなんですがね、そりゃちょっと違うね。世の中株屋だけで動いてるんじゃねえんだよ。ここんとこ勘違いしてはいけない。事業会社こそが企業価値を左右する存在だ。そこんとこお忘れなきよう。
Price is what you pay and value is what you get.
Warren Buffett
(価格とは、何かを買うときに支払うもの。価値とは、何かを買うときに手に入れるもの。)
わたくし、こりゃタイヘンな名言だと思っているんですが、少しく言葉足らずだと思う。僕が付け加えるなら、こうだ。
Price is what you pay and value is what you get. But value is related to your place to stand, and the difference makes market, also.
(価格とは、何かを買うときに支払うもの。価値とは、何かを買うときに手に入れるもの。しかし、手に入る価値は買い手の立場によって変わり、その違いもまた市場を形成する。)
ありていに言えば、トヨタ自動車にとってのデンソー株の価値と、ずんちゃかにとってのデンソー株の価値は全く違う。また、デンソー株にとってトヨタの売買行動とずんちゃかの売買行動は全く違う意味を持つ。ずんちゃかがデンソー株を買おうが売ろうがその価値に何ら影響は与えないが、トヨタがデンソー株を売って、あまつさえ同時にカルソニックカンセイ株を買ったりしようものなら、実際にデンソーの事業に関する情報が変化しなくとも、デンソーの将来価値のディスカウントレートがニワカに跳ね上がり、価値も価格も大暴落するだろうことは想像に難くない。また、デンソー株が突然今の100倍に値段が跳ね上がったところで、トヨタが利確するかね。
以前、商品先物の世界を例に引いて「実需筋と投機筋」という考え方をご紹介したことがあったのだけれど、あのとき言いたかったのはこのことである。何か例が極端すぎて不適当なような気もするが、まあそういうことである。株券に何か唯一無二の神聖な絶対的価値があるという幻想は、今すぐ便所に流していただきたい。
by zoomchaka | 2007-06-24 13:40 | 脱「バリュー投資」小論 | Comments(11)
それはありますよね。
価値は市場にあるモノではなくて、相互関係からみちびかれるものでもありますし。
だからこそ、市場での株価なんてモノはアテにならないものであるとも思ってます。だからこそ、TOB設定株価がやたら高かったりとかもあるんでしょうし。
ま、相場での株価は一つの評価であって、絶対評価ではない、と。
バリュー投資家が企業価値がどうのこうのと計算してますが、んなもん
アテになるかいな、と私は思ってます。
価値は市場にあるモノではなくて、相互関係からみちびかれるものでもありますし。
だからこそ、市場での株価なんてモノはアテにならないものであるとも思ってます。だからこそ、TOB設定株価がやたら高かったりとかもあるんでしょうし。
ま、相場での株価は一つの評価であって、絶対評価ではない、と。
バリュー投資家が企業価値がどうのこうのと計算してますが、んなもん
アテになるかいな、と私は思ってます。
ねぇ まだゼンテック売るつもりなん?
To:しょさん
そう。だからバークシャーの経営指標は持ち株の評価額ではなく、ルックスルー利益
なんですよね。その辺に関する僕の考えは、はまたこのシリーズで書きます。
そう。だからバークシャーの経営指標は持ち株の評価額ではなく、ルックスルー利益
なんですよね。その辺に関する僕の考えは、はまたこのシリーズで書きます。
To: こまちんさん
まだって何やのw まだ何の結果も出てないのに。兆候はいっぱい出てるけどさ。
まだって何やのw まだ何の結果も出てないのに。兆候はいっぱい出てるけどさ。
>拠出するリスクマネーの対価として入手するもの
言いたいことはわかるけど
結局この得るものが少ないから
日本はこんなにROEが低いんじゃないの?
現実問題として、欧米の事業会社では不必要な
持ち合い的、自己保身的なものが
多いんじゃないの。
言いたいことはわかるけど
結局この得るものが少ないから
日本はこんなにROEが低いんじゃないの?
現実問題として、欧米の事業会社では不必要な
持ち合い的、自己保身的なものが
多いんじゃないの。
付け加えておくと、自分も株価を絶対とは思ってません。
だけど、事業を始めるためのコストと考える必要は
あると思います、費用対効果を忘れて何でもやりまくったのが、持ち合い全盛期の失敗のひとつですしね。
結局、ROEも配当比率もトータルな経済合理性も
欧州レベルにもなれない原因のひとつとして
個人的には認識しています。
もちろんアメリカほどにドライになれるとは思いませんが。
だけど、事業を始めるためのコストと考える必要は
あると思います、費用対効果を忘れて何でもやりまくったのが、持ち合い全盛期の失敗のひとつですしね。
結局、ROEも配当比率もトータルな経済合理性も
欧州レベルにもなれない原因のひとつとして
個人的には認識しています。
もちろんアメリカほどにドライになれるとは思いませんが。
いやあ、そりゃもう仰るとおりなんですよ。
僕もこの話をここで終わるつもりはなくって、続きがあるんですが、突き詰めていく
と、ROE即ち資本効率は高いことが「善」なのか、低い、あるいはそれを気にしない経
営は「悪」なのか。だいたいそりゃ誰にとっての善悪だと。次はそんな話につなげて
いきたいと思っております。
また書くのに一ヶ月くらいかかるかもしれませんがw、よろしかったら感想聞かして
下さい。
僕もこの話をここで終わるつもりはなくって、続きがあるんですが、突き詰めていく
と、ROE即ち資本効率は高いことが「善」なのか、低い、あるいはそれを気にしない経
営は「悪」なのか。だいたいそりゃ誰にとっての善悪だと。次はそんな話につなげて
いきたいと思っております。
また書くのに一ヶ月くらいかかるかもしれませんがw、よろしかったら感想聞かして
下さい。
こんにちは。
「価格」は取引の際に支払った貨幣額なので客観的事実ですが、「価値」は主観的評価なので評価者によって違って当然だと思います。
企業価値の定義の1つとして「将来CFの割引現在価値の総和」という考え方がありますが、その定義に乗っかるかどうかは人それぞれですし、その定義に乗っかったとしても将来CFをどう考えるか、割引率をどうするかといった点は主観的評価なので、その結果導き出される数字はみんな違います。
それに、企業は日々変化するのだから、企業価値も日々変化するはず。いつか「価格が価値に収束する」としても、そのときの「価値」が株を買ったときの「価値」と同等以上であるという保障はどこにもないと考えています。
個人的には、バフェットの言葉はそういった意味を包含していると理解しているので、「but・・」以下は不要かなと思います。
「価格」は取引の際に支払った貨幣額なので客観的事実ですが、「価値」は主観的評価なので評価者によって違って当然だと思います。
企業価値の定義の1つとして「将来CFの割引現在価値の総和」という考え方がありますが、その定義に乗っかるかどうかは人それぞれですし、その定義に乗っかったとしても将来CFをどう考えるか、割引率をどうするかといった点は主観的評価なので、その結果導き出される数字はみんな違います。
それに、企業は日々変化するのだから、企業価値も日々変化するはず。いつか「価格が価値に収束する」としても、そのときの「価値」が株を買ったときの「価値」と同等以上であるという保障はどこにもないと考えています。
個人的には、バフェットの言葉はそういった意味を包含していると理解しているので、「but・・」以下は不要かなと思います。
To: 空色さん
えーっと。改めて自分の悪文ぶりに呆れておりますw
確認なんですが、空色さんのコメントは、この悪文の論旨そのものには概ね賛同頂いた上で、上掲バフェットの言葉にある "value" は、買い手によっても異なり、時間によっても変化しうる多種多様な価値を既に含んでいる、そんなこんなひっくるめてバフェットはこの言葉を発している、というご趣旨ですよね?
えーっと。改めて自分の悪文ぶりに呆れておりますw
確認なんですが、空色さんのコメントは、この悪文の論旨そのものには概ね賛同頂いた上で、上掲バフェットの言葉にある "value" は、買い手によっても異なり、時間によっても変化しうる多種多様な価値を既に含んでいる、そんなこんなひっくるめてバフェットはこの言葉を発している、というご趣旨ですよね?
いえいえ、私の方こそ悪文ですいません。
ずんちゃかさんの仰るとおりです。
もちろん、独りよがりの勝手な解釈なので、「根拠を示せ」と言われても何も出ませんけど(笑)
ただ、以前にどこかで、バフェットが「私はグレアムとvalueの捉え方が違うが、valueがpriceを大幅に下回った銘柄に投資する戦略は同じ」という趣旨のことを語ったと読んだ記憶があるので、彼は人によってvalueが違うと考えていたんじゃないかと勝手に想像しています。
ずんちゃかさんの仰るとおりです。
もちろん、独りよがりの勝手な解釈なので、「根拠を示せ」と言われても何も出ませんけど(笑)
ただ、以前にどこかで、バフェットが「私はグレアムとvalueの捉え方が違うが、valueがpriceを大幅に下回った銘柄に投資する戦略は同じ」という趣旨のことを語ったと読んだ記憶があるので、彼は人によってvalueが違うと考えていたんじゃないかと勝手に想像しています。
To: 空色さん
いーえー。とんでもない。ただ、僕はバフェットの言葉にはもうちょっと狭めの枠が掛かってるように思ってます。企業の支配権、即ち利益処分権。それと彼の資産は投資先企業の株式ではなく、あくまでもBRK株であること。そこいらがキーになるのかなあと。
いーえー。とんでもない。ただ、僕はバフェットの言葉にはもうちょっと狭めの枠が掛かってるように思ってます。企業の支配権、即ち利益処分権。それと彼の資産は投資先企業の株式ではなく、あくまでもBRK株であること。そこいらがキーになるのかなあと。









